血管腫・血管奇形とは

※『血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017』はこちらから。

→ガイドラインとは、以下のように定義づけられています。
診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考量して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書。(福井次矢・山口直人監修『Minds診療ガイドライン作成の手引き2014』医学書院.2014.3頁)

 

以下の内容は、専門医の監修を受けた上で掲載しております。
~血管腫・血管奇形IVR研究会 代表世話人 今井茂樹医師 監修~
※以下の内容は、Wikipediaにも投稿しています。

  • 血管腫と血管奇形の違い
    血管腫は生後急速に増大し、その後徐々に退縮しますが、血管奇形は出生前から存在し、外傷や感染、ホルモン変調など成長によって増大する点で、大きく異なります。かつては血管腫と血管奇形の正確な分類はなされていなかったため、色々な病名が用いられてしまったことが、正確な分類を妨げる原因となっていたようです。同じ『血管腫』と病名がつくものでも、現在では『血管奇形』に分類されるものもあります。
  • 血管腫(hemangioma)とは?
    血管腫とは、血管内皮細胞が異常増殖する小児の良性腫瘍です。通常出生時にはみられず、生後まもなく出現して急速に増大しますが、90%以上は7歳くらいまでに自然退縮します。女性:男性=3:1で女性に多く、遺伝性はありません。多くの血管腫は自然退縮するため、経過観察のみでとくに治療を必要としませんが、病変が大きい場合にはレーザー治療や切除がおこなわれます。従来、『毛細血管性血管腫』『苺状血管腫』『苺状母斑』と称されていたものがこれにあてはまります。皮膚表面の血管腫では鮮やかな深紅色の隆起がみられ、多くは直径0.5~5㎝で境界ははっきりしていますが、地図上にひろがるものもあります。また、皮下組織の血管腫では皮膚が少しふくらんで青みがかった色になったり、ふくらみもなく普通の色と変わらないこともあるようです。
  • 血管奇形(vascular malformation)とは?
    血管奇形とは、先天的な血管の形成異常で、血管内皮細胞は正常です。出生前から存在し、身体の成長に比例して増大し、自然退縮することはありません。女性:男性=1:1で性別による差はなく、ほとんどの血管奇形には遺伝性はありませんが、Rendu-Osler-Weber症候群など特殊な遺伝性疾患もあります。従来、『ポートワイン色病変』『火炎状母斑』『海綿状血管腫』『静脈性血管腫』『リンパ管腫』『動静脈奇形』『単純性血管腫』『リンパ管腫』などと称されていたものは最近の分類では血管奇形に属します。
    臨床上、血流の遅いもの(low-flow-lesion)と血流の速いもの(high-flow-lesion)に分けられ、さらにそれらは血流の遅い『毛細血管奇形』『静脈奇形』『リンパ管奇形』と血流の速い『動静脈奇形』に分けられます。
    それぞれの症状にあわせて、手術や塞栓術、硬化療法などの治療がおこなわれます。

    毛細血管奇形(capillary malformation)
    皮膚の毛細血管の拡張によるもので、病変は平らで境界がはっきりしています。赤ワイン色を示すことからポートワイン色病変ともよばれ、元ソビエト連邦大統領のゴルバチョフ氏の頭部にこの病変がみられます。美容上の問題が中心で、レーザー治療がおこなわれますが、まれに皮下の動静脈奇形と同時に存在することがあり、腰背分の毛細血管奇形では脊椎や脊髄の奇形を合併する可能性もあります。従来『単純性血管腫』と称されていたものは、最近の分類ではこの『毛細血管奇形』に分類されることになります。
    これに関連する疾患として、
    『Sturge-Weber症候群』『Rendu-Osler-Weber症候群』『毛細血管拡張性運動失調』
    などがあげられます。静脈奇形(venous malformation)スポンジ状(海綿状)あるいは嚢(のう)胞状の拡張した血管腔で、大きさや発生部位は様々です。
    症状がない場合もありますが、徐々に増大して周辺組織を圧迫したり、
    神経の圧迫による疼痛や外傷による出血、血栓形成による疼痛をおこすことがあります。
    また、大きな病変では美容上および機能的に問題となります。
    四肢の静脈奇形の特徴として、
    ①青色または紫色の呈する(皮膚表面の場合)
    ②病変部を下垂させたり、中枢側を駈血帯などで圧迫すると膨張が増強する
    ③病変部を心臓の高さより上方に挙上すると、縮小または軟化する
    ④理学的所見および画像所見上、動静脈短絡を認めない
    の4点があげられます。
    また、しばしば周囲の静脈拡張、深部静脈の異常や石灰化(静脈石)を伴います。
    静脈石とは、局所で凝固系の異常があったり血流が滞ることにより血栓が石灰化したもので、
    一度できると消失することはありません。
    静脈奇形の保存的治療にはサポーターなどによる圧迫が用いられ、
    血栓形成による疼痛には消炎鎮痛剤が有効です。
    症状によって、手術や塞栓術、硬化療法やレーザー治療などがおこなわれますが、
    外科的治療の場合には病変を完全に摘出する必要があり、
    不完全な摘出手術をおこなうと残った異常血管が拡張したり、
    創傷治癒の過程で異常血管が新生して、
    病変の再発をきたす可能性があります。
    従来『海綿状血管腫』と称されていたものは、
    最近の分類ではこの『静脈奇形』に分類されることになります。
    これに関連する症候群として、『青色ゴムまり様母斑症候群』『Klippel-Trenaunay-Weber症候群』
    などがあります。

    リンパ管奇形(lymphatic malformation)

    血液のかわりにリンパ液を含んだ、血流のない血管奇形として扱われ、
    しばしば静脈奇形や動静脈奇形を合併します。
    リンパ管奇形には、
    ①リンパ管とリンパ節の異常からリンパ流が障害され、リンパ浮腫を生じるもの、
    ②単発あるいは多発の嚢胞性病変を生じるもの、
    ③乳びの循環障害を生じるもの
    の3つのタイプがあり、腋窩や肩などによく発生します。
    炎症や圧迫症状、美容上の問題がある場合には硬化療法がおこなわれます。
    従来『リンパ管腫』と称されていたものは正確には『リンパ管奇形』に分類されることになります。

    動静脈奇形(arteriovenous malformation)

    動脈と静脈が正常の毛細血管を介さずに異常な交通を生じた先天性の病変です。
    動静脈奇形には、
    ①頭頚部や四肢などの比較的太い動脈幹と静脈に生じるもの、
    ②四肢などの動静脈間に無数の細かな交通を生じるもの(びまん型)、
    ③肺や脳、肝臓、筋肉などに塊状の異常血管を生じるもの(局限型)、
    の3つのタイプがあり、
    第Ⅰ期(静止期)、第Ⅱ期(拡張期)、第Ⅲ期(破壊期)、第Ⅳ期(代償不全期)
    の四期にわけられます。
    症状としては、第Ⅰ期では皮膚紅潮・発赤、第Ⅱ期では異常拍動音の聴取・増大、
    第Ⅲ期では疼痛・潰瘍・出血・感染、第Ⅳ期では心不全がみられます。
    病期によって治療選択は異なり、
    手術や経動脈的塞栓術、塞栓硬化療法などがおこなわれますが、治療が困難な疾患です。